社会全体で「殺処分ゼロ」を目指す動きが広がる昨今、その実現までの道のりはいまだ遠いといわれる沖縄県。沖縄県動物愛護管理センターでは、猫と人が共に暮らせる社会を目指し、さまざまな取り組みが続けられています。
※記事内容はすべて2026年2月1日現在のものです。
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沖縄ならではの事情と猫問題
「治療の施しようのない大ケガや病気の猫、馴化が非常に難しい威嚇猫など、やむを得ず殺処分の対象となる猫の収容はあとを絶ちません」と、沖縄県をとりまく猫問題について聞かせてくれたのは、沖縄県動物愛護管理センター(以下、センター)職員の今井さん。「このような現状がある一方で、県内の都市部では室内飼育が定着し、TNRも積極的に行われています」
※TNRとは、Trap(捕まえる)、Neuter(不妊手術する)、Return(元の場所に戻す)の略で、繁殖を抑えながら地域猫として共生していくための活動です。
苦情の多い中部エリアに目を向けると、沖縄ならではの課題も見えてきます。大規模な米軍基地が集中する地域では、日本語や法令への理解が十分でない外国人居住者との間で問題が起こるケースもあるといいます。また、近年は宅地開発が進み、県外からの移住者と古くからの住民との間で、猫の飼い方をめぐるトラブルが発生することもあります。
長年ネズミ対策として猫を飼ってきた地域では、外飼いが当たり前という価値観も残っています。「人の食べ物を与え、外飼いしている人もまだまだいますが、それが昔からの当たり前。当事者に問題意識はなく、改善を求めてもなかなか耳を傾けてもらえません」。動物病院に行く習慣がないこともあり、その結果、猫が増えてしまったり、周辺に迷惑をかける可能性にまで意識が及ばず、トラブルにつながることもあるといいます。
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地域猫の認知と若い世代が未来を変える
センターの重点課題のひとつが、地域猫の認知拡大です。外猫が多いと苦情が増えるだけでなく、虐待におよぶ人もいるため、TNRを行い、地域猫として一代限りの生をまっとうする仕組みを広く知ってもらうことが大切だといいます。
さらに、若い世代への啓発活動にも力を入れています。譲渡推進棟の開設以来、小学生から専門学校生まで学生がセンター見学に訪れる機会が増加。中学校の授業や高校生の探究活動、大学生の卒業研究のテーマとしてセンターの活動が取り上げられることもあるそうです。
「一人でも多くの学生に動物愛護管理の課題や意義に目を向けてもらえたらと思っています。そんな彼らが社会で活躍する時代になれば、状況は少しずつ変わっていくはずです」。人々の意識を変え、社会を動かすには長い時間が必要ですが、よりよい未来を目指して地道な取り組みが続けられています。
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出典/「ねこのきもち」2026年4月号『猫のために何ができるのだろうか』
取材/野中ゆみ
※この記事で使用している画像は2026年4月号『猫のために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。
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